シャトー・デュ・ムール・デュ・タンドル
「シャトーヌフ・デュ・パプの小さな名門」

シャトー・デュ・ムール・デュ・タンドル<br>「シャトーヌフ・デュ・パプの小さな名門」

イントロ

フランス南東部、シャトーヌフ・デュ・パプ。シストや石灰岩、丸いガレ(礫石)が織り成す土壌、ミストラルがもたらす乾いた風、地中海性気候の明瞭な季節感・・・。

この土地は、赤ワインの滋味をじっくり育む条件がそろう、フランス屈指の銘醸地。そんな恵まれた環境の中で、クルテゾン(Courthézon)に根を張る「シャトー・デュ・ムール・デュ・タンドル」は、ひときわ個性のある家族経営ドメーヌです。

このシャトーは、19世紀末から続くパウメル(Paumel)家の家業として発展してきて、現在は、2013年に家業を継いだポール・パウメルが7代目としてワイン造りの指揮を執ります。

祖父ジャック・パウメルのそばで学んだ「畑に寄り添い、ブドウの声を聴く」という信条を、醸造設備の近代化やレンジ拡張といった実務面でアップデートしつつ体現しています。

畑はクルテゾンの小高い丘陵に広がり、風通しの良さと排水性に優れた土壌が健全なブドウを育てています。ローヌ南部ならではのガレは昼の熱を蓄え、夜にゆっくりと放熱することで果実の熟度を高め、石灰質は骨格とミネラル感を与えます。祖父ジャックの代から続く「畑に寄り添う」哲学は、殺虫剤を使わない方針に象徴され、自然と畑を尊ぶ姿勢が、ワインの澄んだ果実味と落ち着いた質感に直結しています。現在はフランス農業における環境認証制度の最上位HVE認証を取得しています。

また、オランジェの街中にはワインバーや直営ブティック、ワイナリーの隣には宿泊施設といった“体験の場”を充実させているのも、家族が紡ぐ物語をお客様やゲストと分かち合うための工夫だとポールは語ります。

畑と人が奏でる調和、そして訪問で見えた哲学

この背景を胸に、2025年9月末、収穫を終えたばかりのシャトーを訪れました。

ポールは「訪問が今週でよかったよ。先週なら収穫で手一杯だったんだ」と笑顔で迎えてくれ、私たちは強い日差しの下、シャトーヌフ・デュ・パプとプラン・ド・デューの畑へ向かいました。

足元にはガレが広がり、太陽の熱を抱えた石がじんわりと靴底に伝わります。踏みしめると土は柔らかく、ふわりと沈む感触。見渡せば、ミストラルが絶え間なく吹き抜け、樹々を揺らし、葉の音と鳥の声が風に溶けていきます。静かな畑で、自然の力がブドウを育てる様子を肌で感じる瞬間でした。

ポールが「この畑の力を味わってみて」と案内してくれた一房のブドウを口に含むと、タイミング的に少し水分は飛んでいたものの、肉厚な果皮の中から果汁が弾け、凝縮した甘みと酸が広がります。「この果実がどんなワインになるのだろう」——
その期待を胸に、セラーでタンクサンプルと完成品を試飲しました。

グラスから立ち上がる香りは、南ローヌらしい温かな果実味に、プロヴァンスのハーブのニュアンスが重なります。口に含むと、力強さと繊細さが絶妙に調和し、テクスチャーは滑らか。
“畑に寄り添う”という哲学が、一口目から伝わってきました。畑で感じた風や土の記憶が、そのまま液体に変わったような体験です。

この訪問で理解したのは、シャトー・ムール・デュ・タンドルのワインが単なる飲み物ではなく、土地と人と時間が織りなす物語だということ。畑の静けさ、ブドウの生命力、そして造り手の美学——それらが一体となってグラスに宿っていました。

看板商品Côtes du Rhône Villages Plan de Dieu

プラン・ド・デュー(Plan de Dieu)は、コート・デュ・ローヌ ”ヴィラージュ”のなかでも最も力強く、凝縮感ある赤ワインを生むエリアのひとつです。

そもそもPlan de Dieu(神の平原)という名は、ローヌ南部の広大な平野に由来し、歴史的には中世の修道院がこの地を耕したことに由来します。土壌は砂質と粘土質が交錯し、ガレが点在するため、昼夜の温度差が果実に凝縮感を与えます。果実の密度とタンニンの質感が際立ち、香りはブラックベリーやカシスに、タイムやローズマリーといったガリーグのハーブが重なり、口中ではスパイスとビターチョコのニュアンスが広ります。余韻は長く、わずかな塩味が骨格を引き締めてくれます。

シャトー・ムール・デュ・タンドルではこのプラン・ド・デューにグルナッシュ、ムールヴェードル、シラー、サンソーを栽培しており、樹齢70〜90年の古樹からは深みのあるぶどうが毎年収穫されます。

価格帯はシャトーヌフより手頃ながら、構造と複雑性は一級品で、コストパフォーマンスの高さからソムリエや愛好家に根強い人気を誇っています。

ちなみに、肝心のシャトーヌフ・デュ・パプは生産量が少なく、世界中から引手あまたでなかなか入手することができません。今年も欲しいと思ったときに完売してしまいました。ということで、入荷した時にはぜひとも迷わずお買い求めいただくことをおすすめします!

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